ふたごちゃんをさがして

(シルクネコふたごちゃん)

 シルクネコのふたごちゃんは、お母さんの洋服屋さんが大好き。
 色とりどりのお洋服、ひらひらしたレースやリボン、それにきれいなアクセサリーをながめて、あきることがありません。
 お母さんの仕事中は、うば車のなかで、お母さんがお客さんたちに、お洋服やアクセサリーをすすめている様子を見ています。
 そして、だれかが試着室からきれいなドレス姿で出てくると、
「キャッキャッ!」
と、歓声をあげて、手をパチパチパチ。

 この二人のよろこびようは、
「ふたごちゃんは、ほめるのがじょうずね。」
と、お客さんたちのあいだでも評判です。
 ふたごちゃんは、アクセサリーで遊ぶのも大好きで、お気に入りは、きれいな石のネックレス。
 手に持ってゆらしたり、おひさまにかざして、キラキラ光らせてみたり。
 眠るときも、そのネックレスをにぎっていると、おちつくのです。
「ふたごちゃんは、本当にドレスやアクセサリーが好きね。」
 家族のみんなはいつも話していました。
 とにかく、きれいなお洋服やアクセサリーを見ていられたら幸せなふたごちゃんなのです。

 ある日のこと、ふたごちゃんは洋服屋さんの前でひなたぼっこをしていました。
 ゆりかごはゆらゆら気持ちよくゆれて、おひさまはぽかぽか。
 ゆりかごの中であくびをしているふたごちゃんに、
「二人とも、そろそろおひるねの時間ね。」
と、子守唄を歌いだしたお母さんも、ついうとうと、いすに座ったまま、うたたねをはじめてしまいました。
 ところが、お母さんが眠ったとたん、近くの木の枝で小鳥がチュンチュンさえずり、目をさましたふたごちゃん。
 あたりを見まわすと、植木の葉っぱが、風でひらひらゆれています。
「キャッキャッ。」
 ひらひらしたものが大好きなふたごちゃんは、ゆりかごからおりて、はいはいで植木の中にもぐりこみました。
 向こうにはきれいなお花が咲いています。
 それから、キラキラゆれる木もれ日や、風でころがる落ち葉。
 おもしろいものが次々と目の前にあらわれて、ふたごちゃんは、楽しそうに、植木の間を動きまわりました。
 ふと見ると、洋服屋さんのドアが開いています。
 ふたごちゃんは、はいはいでお店の中に入って、大好きなドレスに近づいていきました。
 そして、すっぽりとスカートの中に入ってしまったのです。
 スカートの内側は、きれいなレース。
「きゃあ、きゃあ。」
 ふたごちゃんたちはすっかりよろこんで、スカートをゆすりました。
 外から見ると、まるでドレスだけが踊っているみたいです。
 そんなふうにしばらく楽しく遊んでいたのですが、本当なら、もうおひるねの時間。
 やがてつかれたふたごちゃんは、そのままそこで眠ってしまいました。

 目をさましたお母さんは、ゆりかごの中にふたごちゃんがいないので、びっくり。
「ふたごちゃーん!」
と、呼んでも、こたえはありません。
「どうしたの?」
 お母さんの声をききつけて、家族もあつまり、みんなで探したのですが、ふたごちゃんはどこにもいません。
「ふたごちゃん、どこにいっちゃったの……。」
と、そのとき、お母さんは近くの草の上に、なにか光るものが落ちていることに気がつきました。
 よくみると、それはふたごちゃんお気に入りのネックレスの石。
 石は点々と草の上に続いています。
「ふたごちゃんの持っていたネックレスの糸がきれて、落としていったにちがいないわ。」
「あっ、あっちにもある!」
 みんなは落ちている石のあとをたどって、植木の中へともぐっていきました。
「いたた……枝がひっかかっちゃった。」
「せまくて通れないよ。ひっぱって!」
と、はいはいでしか通れないような植木の中をあちらからこちらへとくぐりぬけ、やっと広いところに出ると、そこはお店の前。

 石は、玄関からお店の中に続いています。
「あれれ?」
 そのままたどっていくと、石はスカートの中へ。
 ちょうどそのとき、スカートの中で、ふたごちゃんが目を覚ましました。
 そして、お母さんがスカートをめくったとたん、
「ばあ!」
楽しそうに声を上げたのです。
「ふたごちゃん!」
 家族のみんなは、頭や洋服に葉っぱをたくさんつけたまま、ほっとひと安心。
「こんなところにいたなんて、ふたごちゃんらしいわ。」
 みんながさんざん心配していたともしらず、ふたごちゃんは、ごきげんです。

 このことがあってから、スカートにかくれて、
「いない、いない、ばあ」をするのが、ふたごちゃんの大好きな遊びのひとつになりました。

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