赤ちゃん、へんしん!

(くるみリスの赤ちゃん )

 シルバニア村のびようしさんは、くるみリスのお母さん。
 くるみリスの赤ちゃんは、そのことがうれしくてたまりません。
たとえば、びよういんにやって来た女の子が、
「あのね、おひめさまみたいにしてください。」
とたのむと、お母さんは、
「いいわよ、まかせて。」
とシャンプーをして、毛をととのえて、しあげにはリボンやお花をつけて、本もののおひめさまのようにきれいにしてくれます。
(お母さんってすごいな、すごいな。)
びよういんにいってお母さんにたのめば、何でもすきなかっこうにしてもらえる、と赤ちゃんは思っていたのです。

 そんな赤ちゃんがまちにまった日がやって来ました。
 ようちえんの新学きにそなえて、お母さんが赤ちゃんの毛をきれいにそろえてくれることになったのです。
「さあ、かわいくしましょうね。」
と、くるみリスのお母さん。
 かがみの前にちょこんとすわって、ケープをまいて
 もらった赤ちゃんは、おきゃくさんになったつもりで、お母さんにたのみました。
「えーとね、イチゴケーキみたいにしてください。」
 赤ちゃんはクリームのいっぱいのったイチゴのショートケーキが大すきだったのです。

 お母さんは赤ちゃんのちゅう文にちょっとおどろきましたが、
「いいわよ。」
と、やさしく言うと、白いリボンと赤い木のみをつかって、赤ちゃんの頭をショートケーキのようにかざってくれました。
 大よろこびで、さっそくお外にとびだしていった赤ちゃん。
 せせらぎ川に自分のすがたをうつして、ニコニコしながら見ていたのですが、ふと空を見上げると、小鳥が気もちよさそうにとんでいます。
 ケーキもいいけど、空をとべる小鳥さんのほうがかっこいいかな?
 そこで、赤ちゃんはびよういんに走ってもどると、お母さんにたのみました。
「あのね、小鳥さんにしてください。」
「いいわよ。かわいい小鳥さんになるには、どうしたらいいかしらね。」
と、お母さん。
 こんどは白いレースをつかって、赤ちゃんのかたにひらひらの小鳥の羽をつけてくれました。
「わあい、小鳥さんだあ。」
 赤ちゃんはまた大よろこびです。
 びよういんのかいだんからぴょんととびおりて、とんだつもりになってあそんでいました。

 そこに通りかかったのは、お兄ちゃんのくるみリスの男の子。
「何をしているの?」
「あのね、おかあさんに、小鳥さんにしてもらったの。」
 赤ちゃんがせつめいすると、くるみリスくんは、
「じゃあ、もっと高いところをとばせてあげるよ。」
と言って、赤ちゃんをかた車して、にわを走りまわってくれました。
「わあ、とんでる、とんでる。」
 赤ちゃんは楽しくてたまりません。
「お兄ちゃんて、すごいなあ。」
 赤ちゃんは、こんなくるみリスくんが大すきです。
 サッカーやつりや木のぼりが上手で、いつも元気で、おもしろくて……お兄ちゃんみたいになりたいな。
 そこで、赤ちゃんはまたびよういんに行って、お母さんにたのみました。

「お兄ちゃんにしてください。」
「こんどはお兄ちゃんなのね。……じゃあ、こうしましょう。」
と、お母さんは、赤ちゃんにくるみリスくんとおそろいのシャツをきせて、ぼうしをかぶせて、学校用のかばんをもたせてくれました。
 これですっかりお兄ちゃん気分になって、ごきげんの赤ちゃん。
(もう、お兄ちゃんだから、ようちえんじゃなくて、学校に行こうっと。)
 そして、お兄ちゃんみたいにサッカーをして、木のぼりをして……と、思っていたのですが、ようちえんの前を通りかかると、ほかの赤ちゃんたちが、すな場であそんでいるのが見えました。
 近づいていくと、赤ちゃんたちは、みんなどろんこになって楽しそうにあそんでいます。
「くるみリスちゃん、いっしょにあそぼう。」
と、ほかの赤ちゃんたちにさそわれて、
「うん!」
 くるみリスの赤ちゃんは、元気に答えたものの、ちょっと、まって……今は赤ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんになっていることを、思い出しました。
 そこでいそいでびよういんにもどって、お母さんにこうたのんだのです。
「ようちえんに行くかっこうにしてください。」
 それをきいたお母さんは、やさしくほほえむと、赤ちゃんをシャンプーして、毛をそろえてくれました。

 そして、さいごにようちえん用のぼうしをかぶせて、
「はい、できあがり。赤ちゃんは、やっぱりこのかっこうが一番にあうわよ。」
と、にっこり。
「ありがとう、お母さん。」
 くるみリスの赤ちゃんは、うれしそうに、みんなのまっているようちえんにかけだして行きました。

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