ふたごちゃんのぼうけん

(くるみリスのふたごちゃん)

 ある日のこと、くるみリスのお母さんが、ふたごちゃんをだっこして、お家からにわに出てきました。
「まあ、いい天気。ふたごちゃんたち、おさんぽに行きましょうか?」
と、お母さんはふたごちゃんに話しかけました。
 くるみリスのふたごちゃんは、うば車にのせてもらって、おさんぽするのが大すきなのです。
「ちょっとここでまっててね。いま、うば車をとってくるわ。」
 お母さんは、ふたごちゃんを近くにおいてあったに車にのせると、いそいでお家の中へ。
 ふたごちゃんがきょろきょろとに車の上を見ると、そこには、新しい本だながありました。
 大工しごとのとくいなくるみリスのお父さんが作って、学校にとどけるためにのせておいたものです。

 こうきしんいっぱいのふたごちゃんは、はいはいで本だなに近づき、さわっているうちに本だなの後にかくれてしまいました。
 そこにやって来たのは、くるみリスのお父さん。
 そして、お父さんは、本だなのかげにふたごちゃんがいるとも知らず、いそいで出ぱつしてしまったのです。
 ふたごちゃんは、思いがけずに車でおでかけができて、大よろこび。
 なにより楽しいおさんぽになりました。
 はたけや野原をすぎて、ふたごちゃんはゴトゴトに車にゆられていきます。
 しばらくして、どこからか、ふわっといいにおいがただよってきました。
 お父さんが森のケーキやさんの前を通りかかったのです。
 パンやケーキをやくあまいにおいをかいで、ふたごちゃんのおなかがくーっとなりました。
「やあ、こんにちは、くるみリスさん。どこに行くんだい?」
と、店長のネズミのお父さん。

「学校に、本だなをとどけに行くんだよ。」
「ちょうどよかった。きゅう食用のパンがやきあがったところなんだ。いっしょにとどけてもらえないかな?」 
「いいとも。に車にのせていくよ。」
 くるみリスのお父さんがそうこたえると、ネズミさんは、パンのたくさん入ったカゴを、本だなのよこにおきました。
 まさかふたごちゃんがその後にいるなんて、思いもしません。
 いいにおいのするパンを目の前に山づみにしてもらって、ふたごちゃんはまたまた大よろこびです。
 さっそく手にとって、ぱくっとひとくち。ほんのりしたあまさが、口の中にひろがっていきます。

 そして、パンについているチョコやクリームをペロペロなめながら、に車にゆられていると、こんどは、お兄ちゃんやお姉ちゃんの楽しそうな声が聞こえてきました。
 どうやら、お父さんは学校についたようです。
 自分たちがいるところが、学校だと気づいて、ふたごちゃんは、パチパチと手をたたいて、とってもうれしそう。
 いつも、お兄ちゃんたちといっしょに、学校に行ってみたいと思っていたのです。
 お父さんがマロンイヌの校長先生とお話している間に、ふたごちゃんはに車からすべりおりて、はいはいで学校の中に入っていきました。
 ちょうど子どもたちは校ていで体いくの時間。
 だれもいない教室の中で、ふたごちゃんは、イスをひっくりかえしたり、本をぱらぱらひらいてみたり、おちていたクレヨンをひろってらくがきしたり……すきなだけあそぶことができたのです。
 やがて、いっぱいうごきまわったふたごちゃんは、ねむくなってきてしまいました。
 つくえの下にもぐりこむと、あーあ、とひとつ大きなあくびをして、あとはすやすやとゆめの中。

 さて、校ていからもどってきた子どもたちは、教室の中のようすを見て、
「なんか、へんだな。」
と、首をかしげました。
 イスはたおれているし、らくがきはしてあるし、本はほうりだしてあるし……。
 そのうえ、きゅう食のパンには、小さくかじったあとが、いくつもついています。
 そこに、校長先生と話していたくるみリスのお父さんがやって来て、
「あっ!こんなところにうちのふたごちゃんがねている!」
 と、つくえの下のふたごちゃんを見つけだしました。
「きっと、知らない間に、に車にのっていたんだな。こんなにいたずらしちゃって、ごめんよ。」
 お父さんはねむったままのふたごちゃんを、そっと家までつれてかえりました。
 お母さんは、
「ああ、よかった。に車ごといなくなってしまって、心ぱいしていたのよ。」
と、ふたごちゃんを見て、ほっとひとあん心。

 こうして、ふたごちゃんの小さなぼうけんはおわり、ふたりはまたお母さんのうでの中。
「あら、ふたごちゃん、ねむりながらわらっているわ。」
 お母さんが、ふたごちゃんのね顔をのぞきこんで言いました。
 ふたごちゃんは、ゆめの中で楽しいぼうけんのつづきに出かけているのかもしれません。

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