うば車でおさんぽ

(ショコラウサギのふたごちゃん )

 ショコラウサギさん一家は、シルバニア村に引っこしてきたばかり。
 もちろん、みんなすぐにシルバニア村が大すきになりました。
「キラキラ湖って、とってもきれいね。」
「今日つるつる坂でみんなと遊んだんだよ。すごくおもしろかった。」
 ショコラウサギの男の子と女の子が楽しそうにそんな話をしているのを、ゆりかごの中では、ふたごちゃんがニコニコとわらいながら聞いています。
「そういえば、ふたごちゃんは、まだいろいろなところに行ってないよね。」
と、ショコラウサギくん。
「ふたごちゃんにも、村のいいところをたくさん、見せてあげたいわ。」
 ショコラウサギちゃんも言い出して、さっそく明日、ふたごちゃんをキラキラ湖につれていってあげることになりました。
 よく日、空はまっさおに晴れて、キラキラ湖へのおさんぽにはぴったりのお天気。
「今日はいいところに行こうね。」
と、ショコラウサギちゃんたちにうば車にのせてもらって、ふたごちゃんはまたニコニコ。
 うば車のおさんぽは大すきです。

 道で村のみんなに出会うと、だれもが、
「ふたごちゃん、こんにちは。」
と、声をかけてくれて、ふたごちゃんはキャッキャッと楽しくてたまりません。
 とちゅうでひと休みしてミルクをのみ、さあ、やっとキラキラ湖につきました。
 ところが、長いおさんぽでつかれたふたごちゃんは、そのころはもう、すやすやとゆめの中。
「ふたごちゃん、これがキラキラ湖だよ。」
 うば車をのぞきこんだショコラウサギちゃんたちは、
「あれれ?ねちゃった。」
と、気がぬけてしまいました。
「キラキラ湖を見せてあげたかったのに……。」
 けっきょく、ふたごちゃんはお家に帰るまで、目をさまさなかったのです。

 よく日もいいお天気。
「今日は赤ちゃん広場に行こうね。」 
というショコラウサギくんたちに、うば車にのせてもらって、ふたごちゃんたちはごきげんです。
「風車やメリーを見たら、ふたごちゃんはきっとよろこぶね。」
と、ショコラウサギちゃん。
 そして、赤ちゃん広場の近くまで来ると、ほかの赤ちゃんたちがかけよって、ふたごちゃんを出むかえてくれました。
「ショコラウサギのふたごちゃん、こんにちは。」
「なかよしになろうね。」
「いない、いない、ばあ。」
 みんなにあやしてもらって、ふたごちゃんは、キャッキャッと手をたたいて、ますますうれしそう。
 でも、思いきりわらって大まんぞくしたふたごちゃんは、いつの間にか、うとうと。
 ショコラウサギくんたちがふたごちゃんをおろそうとしたときには、またぐっすりと眠りこんでしまっていたのです。
「こんどもあそべなかったね。」
と、ショコラウサギくんたちは、そのままふたごちゃんをつれてかえりました。

 さて、そのよく日。
「今日こそはシルバニア村のきれいなところを見せてあげよう。」
「ふたごちゃん、お花畑に行こうね。」
と、はりきるショコラウサギちゃんたちにうば車にのせてもらって、ふたごちゃんは今日もまたごきげんです。
と、そのとき……、ぽつぽつと雨がふり出して、たちまちまどの外はどしゃぶりになってしまいました。
「あーあ、またふたごちゃんに村のいいところを見せてあげられなかったね。」
「ふたごちゃん、ついてないなあ。」
と、ショコラウサギちゃんとショコラウサギくんは、ざんねんそう。

 ふたごちゃんは、
(おさんぽ、いかないの?)
というように、まどの外を見ていたのですが……。
 やがて、雨があがり、空に大きな虹がかかりました。
 ふたごちゃんは七色にそまった空を見上げて、
「わあ。」
と、大よろこびです。
 手をたたいて、キャッキャッと虹を見ているふたごちゃんを見て、ショコラウサギちゃんたちも、にっこり。
「こんなに大きな虹を見られるなんて、ふたごちゃんはついているんだね。」

 湖に行ったときはねてしまったけれど、村のみんなに出会えてすてきなおさんぽができました。
 そして、赤ちゃん広場に行ったときには、メリーであそべなくても、赤ちゃんたちとお友だちになれたのです。
「ふたごちゃんたちは、もうシルバニア村のすてきなところ、たくさん知っているね。」
「これから、ゆっくり、いろんなところに行こうね。」
と、ショコラウサギちゃんとショコラウサギくん。
「キャッキャッ。」
 まるでふたりのことばがわかったかのように、ふたごちゃんがうれしそうに手をたたいてわらいました。

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